✓ 最近よく聞く「リセッション」ってなに?
✓ リセッションって、誰が、どうやって判定してるの?
そのような疑問に答えます。
\この記事でわかること/
✓ 米国のリセッションの定義
✓ 米国のリセッションの判定方法と時期
「リセッション」とは?
「リセッション」とは、「景気後退局面」のことです。
「リセッション」は景気循環の一局面
経済活動全般の動向である「景気」は、周期的に上昇と下降を繰り返しており、この変動を「景気循環」と呼びます。
この景気循環を2つの局面に分けて考えるとき、景気の方向性が上向きの局面を「景気拡大局面」(図のピンクの部分)、景気の方向性が下向きの局面を「景気後退局面」(図のブルーの部分)といいます。
また、拡大局面から後退局面への転換点を景気の「山」、後退局面から拡大局面への転換点を景気の「谷」といい、谷から谷までが1循環(サイクル)とされています。
米国における「リセッション」の定義
米国の「リセッション」は、全米経済研究所(後述)により次のように定義されています。
この定義の解釈では、3つの基準(「深さ」「拡散」「持続時間」)をある程度互換性のあるものとして扱うとしています。
また、過去には、経済活動の大幅な低下は「通常、実質GDP、実質所得、雇用、工業生産、卸売小売売上高に見られる」と述べています。
米国の「リセッション」の判定
上で「リセッション」の定義についてお話しましたが、はっきりした基準がなく、よくわかりませんよね…
では、米国の「リセッション」は、誰が判定しているのでしょうか?
米国のリセッションの判定は全米経済研究所が行っている
米国の景気判定は、全米経済研究所(NBER)が行っており、1929年より公表しています。
1978年以降は、NBER内に景気循環委員会(the Business Cycle Dating Committee、メンバー8名)が設置され、同委員会が判定および発表を行なっています。
※「リセッションの判定を行っている」というより、「景気の山と谷の判断をしている」という表現が適切かもしれません(ほぼ同じ意味ですが)。
山:後退局面(リセッション)の始まり、かつ、拡大局面の終わり
谷:後退局面(リセッション)の終わり、かつ、拡大局面の始まり
NBERが「リセッション」と判断した期間は、1855年以降2022年現在までで34回、第2次世界大戦後では12回あります。
全米経済研究所(NBER)とは?
全米経済研究所(NBER;National Bureau of Economic Research)は、1920年に創立された非営利の民間組織で、特にアメリカ経済の研究を専門としています。
アメリカ最大の経済学の研究組織でもあり、全米中の大学で教鞭をとる1000人以上の教授陣が研究員として所属しています。
過去のアメリカ人ノーベル経済学賞受賞者、米国大統領経済諮問委員会委員長の多くがNBERの関係者です。
また、「長短金利差がマイナスになると、その後リセッションが起こる」という研究で有名な、デューク大学のキャンベル・ハーベイ(Campbell Harvey)教授もNBERのメンバーです。
なぜ全米経済研究所(NBER)が判定するのか?
NBERは民間の組織ですが、1961年以降、米国商務省がNBERの景気判定を用いるようになって以来、政府公認の景気判定として扱われるようになりました。
NBERのリセッション入りの発表を待っていては遅い!
それでは、リセッション入りしたかどうかを知るためにはNBERの判定・発表を待っていればいいかというとそうではありません。
NBERでは、景気の「山」と「谷」が確実に存在すること、また、その日付を正確に判断するため、十分な時間をかけるとしています。
直近6回のリセッションの開始と終了時期について、NBERの発表時期を調べてみました。
これによると、実際のリセッション開始・終了から発表までに4~21ヶ月かかっていることがわかります。
リセッション入りから発表までは平均約7か月、リセッション明けから発表までは平均約15ヶ月と、終了時期の判定のほうが長くかかる傾向があります。
リセッション入りの発表をしたときには、すでにリセッション明けしている(2001年11月、2020年6月)、リセッション明けの発表をしたときには、すでに次のリセッションに入っている(1981年7月)、ということもありました。
したがって、リセッションの判断にNBERの発表を待っていては遅いということです。
簡易的には「2四半期連続以上のGDPマイナス」だが…
そのため、市場においては「2四半期連続の実質GDPのマイナス」をリセッションの簡易的な判定方法として使用しています。
実質GDP(国内総生産)の速報値は当該四半期の翌月末に発表される(1~3月四半期であれば4月末)ため、NBERの発表より早くリセッションを判断できる可能性があります。
確かに、リセッションと判定された期間のほとんどで、2四半期連続で実質GDPがマイナスを記録していますが、この判定方法がすべてに当てはまるわけではありません。
上図のグレーの網掛け部分はリセッションの時期を示しています。
たとえば、2001年のリセッション(ドットコムバブル崩壊)では、実質GDPが2期連続でマイナスになることはありませんでした。
また、2007年12月~2009年6月のリセッション(リーマンショック)では、初期は2期連続で実質GDPはマイナスにならず、2008年第3四半期から連続でマイナスを記録しています。
とはいえ、実質GDPがマイナスになることはそう多いことではなく、この74年余りでリセッションとリセッション前の2四半期以外では2.68%の確率でしか起きていません。
2022年の第1四半期の実質GDP速報値は-1.4%とマイナスを記録していますので、第2四半期の結果が気になるところです。
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