✓ たまに耳にする「バリュー平均法」ってどういうもの?
✓ バリュー平均法のメリットとデメリットは?
このような疑問に答えます。
\この記事でわかること/
✓ バリュー平均法とは
✓ バリュー平均法のやり方
✓ バリュー平均法のメリットとデメリット
バリュー平均法とは?
「バリュー平均法」 とは、資産運用の目標額を決め、その目標額に達するように月々の投資額を調節する積立投資手法です。
これに対して、積立投資の王道と言われる「ドルコスト平均法」は毎回一定の金額を積み立てる手法です。
バリュー平均法は、投資リターンがドルコスト平均法を上回ることが多いという特徴がある一方、管理には手間がかかるため、積立投資手法としては中級者向けと言えるかもしれません。
バリュー平均法のやり方
それでは、バリュー平均法の実際のやり方をみてみましょう。
事前準備:最終目標額とバリュー経路の設定
まずは、最終的な目標額を設定します。
例えば、「8月までに30万円貯めて海外旅行に行く」、「5年後までに600万円を貯めて、住宅購入の頭金にする」「老後資金として定年までに2000万円貯める」などです。
次に、どのくらいの頻度で積み立てるか(積立回数)を決めましょう。
毎月、2か月に1回、3ヶ月に1回、ボーナスに合わせて半年に1回など、自分の性格や経済状況などから無理のない設定を考えてください。
積立回数が決まれば、自動的にバリュー経路(バリューパス)が決まります。
バリュー経路とは、最終目標額に到達するまでの「途中段階での目標額」のことです。
目標に向かうための階段だと考えると分かりやすいと思います。
最終的な目標額を積立回数で割った金額を、積立のたびに上乗せしたものがバリュー経路となります。
例)「5年後までに600万円を貯める、積立頻度は毎月」であれば…
最終目標額 積立回数
600万円 ÷(12回/年×5年)=10万円/回
つまり1回の積立でバリュー経路は10万円ずつ増えていき、
1回目:10万円、2回目:20万円、3回目:30万円、…、59回目:590万円、60回目:600万円、となります。
これで、バリュー平均法を行う準備ができました。
積立時:評価額に応じた買い付け額の調整と売却
実際に積み立てるときのルールを見ていきましょう。
毎回10万円ずつ増加するバリュー経路に対して、金融商品Aを5回積み立てるという例で考えてみます。
1回目:Aの基準価額が10,000円だとします。保有資産はないため、現在の評価額は0円です。バリュー経路(この段階での目標額)は10万円ですので、評価額が10万円になるよう差額の10万円分(10口)を買い付けます。
2回目:基準価額が12,500円に値上がりしたとしましょう。1回目に購入した10口の評価額は12万5000円になっています。バリュー経路は20万円ですので、差額である7万5000円分(6口)を買い付けます。(保有口数16口)
3回目:基準価額が10,000円に下がりました。16口保有しているので、現在の評価額は16万円です。バリュー経路は30万円ですので、差額の14万円分(14口)を買い付ける必要があります。(保有口数30口)
4回目:さらに値下がりして、基準価額が7,500円になりました。30口保有しており、現在の評価額は22万5000円です。バリュー経路は40万円なので、差額の17万5000円分(23口、端数は無視)を買い付けます。(保有口数53口)
5回目:基準価額が10,000円まで戻ってきました。53口保有しているので、現在の評価額は53万円です。バリュー経路は50万円ですので、評価額がバリュー経路を3万円上回っています。その場合、オーバーした3万円分(3口)を売却します。その結果、保有口数は50口、評価額50万円となります。
最終的に、46万円の積立で50万円の評価額を達成できたことになります。
このように「積立のたびに、評価額=バリュー経路となるように不足分を買付ける or 超過分を売却する」というのがバリュー平均法です。
上の例では分かりやすいように口数買付しているものとして説明していますが、毎回バリュー経路をきちんと達成するためには、1円単位で金額買付できる商品を選ぶのがおすすめです。
バリュー平均法のメリット
かならず目標額を達成できる
ドルコスト平均法が「いくら投資をするか」を目標にしているのに対し、バリュー平均法は「そのときの評価額がいくらになるか」を目標にしています。
例えば、「定年退職までに〇万円」という目標をたてて積立投資をするとします。
ドルコスト平均法で積立していた場合、途中までうまく資産を増やせていたとしても、定年退職直前に大暴落が起これば定年時点で目標額を達成することはできません。
これに対して、バリュー平均法では毎回バリュー経路に合わせて積立金額を調整するため、ルール通りに行っていれば、最終的な評価額は目標金額に必ず一致します。
ただし、当然ながら、最終的な評価額がそれまでの積立額を上回るとは限りません。
平均取得単価を下げられる
バリュー平均法では、価格の値下がり時は投資額が大きくなり、価格の値上がり時には投資額が少なくなります。
そのため、ドルコスト平均法にくらべると、値下がり時により多くの口数を買い付け、値上がり時により少ない口数を購入することになります。
その結果、平均取得単価はドルコスト平均法よりも低くなることが多く、投資リターンはドルコスト平均法を上回るという特徴があります。
確定した利益が出る
バリュー平均法では、積立の途中であっても、そのときの評価額がバリュー経路を上回っていればその差額を売却して利益を確定させます。
これに対し、ドルコスト平均法では途中で売却しないため、順調に資産が増えていたとしても含み益のままであり、実現益とはなりません。
期待以上の含み益が出ている状態から暴落が起こった場合、「儲かっていた時点で売っておけば…」と後悔することがありますが、バリュー平均法ではそういうことがなくなります。
ただし、この利益確定はデメリットにもなりえます(次の項目でご説明します)。
バリュー平均法のデメリット
管理に手間がかかる
バリュー平均法では、商品の価格変動に合わせて毎回買付額を調整しなければなりません。
そのため、投資を継続していく上での管理が煩雑になるというデメリットがあります。
一回設定したあとは放置しておいてよい「自動積立」は使えません。
積立のたびに、商品の現在価格のチェック → 保有資産の評価額を計算 → 買付額(買付口数)の算出 → 買付け申込 → 保有口数の更新、という流れを行うことになります。
毎回電卓などで計算するのは時間の無駄なので、エクセルやGoogleスプレッドシートにあらかじめ計算式を入れておき、できるだけ手間をかけずに管理できるようにするのがおすすめです。
下落局面で資金不足になる恐れがある
バリュー平均法では、下落局面では想定額より大きい金額を積み立てることになります。
例えば、上の例では毎月10万円ずつ増えていくバリュー経路を設定していますが、3回目では14万円、4回目には17万5000円の買付けが必要になっています。
一時的な下げであればいいですが、下落が長期間続いた場合、毎回想定を超えた追加投資資金が必要になり、「これ以上積み立てを続けられない」という状態になる可能性があります。
そのため、バリュー平均法には、ある程度資金に余裕がある方のほうが向いています。
リザーブ口座として、想定より投資資金が少なくて済んだときの浮いたお金や売却益を貯めておき、将来価格が下がり投資資金が大きくなったときのために備えておくという方法もおすすめです。
複利効果が得られにくい
「複利効果」とは、運用で得た収益を当初の元本にプラスして再び投資することで、利益が利益を生みふくらんでいく効果のことです。
バリュー平均法では、評価額が目標金額を超えている場合、超過分を売却して利益を確定させます。
確定した利益は再投資に回さないため、その分の複利効果は得られないことになります。
売却益に税金がかかる
売却益には20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。
NISA口座やiDeCo口座で運用しない限り、遅かれ早かれ税金は引かれてしまうので変わりはないのですが、一応知識として頭の片隅においておいたほうがよいでしょう。
他にも投資をやっている場合は、他で出た損と損益通算することで税金を減らす、という対策も検討の余地がありそうです。
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